自分の心に嘘を付かないということ

昨日の深夜1時ごろだったか、カラスが一匹「カァ」と鳴いた。
真夜中に鳴くとは珍しいこともあるものだと、ウトウトしながらベッドに横たわる。


しばらくして今度は、誰かが窓のようなものを閉める音がした。
心地よく響いたその何気ない生活音は、宇宙を切り裂き、
私という幻想の殻にほんの小さな穴をあけ、私の中に宇宙の流入を促した。


恍惚感、快感、安心(あんじん)とでも言おうか。
手塚治虫火の鳥の中で宇宙生命とよんだもの、けむりんが見性あるいは
正定聚と示していたもの、それらに初めて正面からミートしたような体験。


カスるような体験はこれまで度々あったが、それには理由があった。
自分の心中に沸き起こる感情や思考をなるべくシンプルにし、
冷徹な目で観察と洞察を繰り返すアプローチ。
それこそ見性に至る道と決めつけていたのだが、間違いであった。


自分の心中に沸き起こる感情や思考をそのまま見つめ、
好ましい・望ましくないといった区別をせず、
周囲にある他者や自然を見つめるように、なぜそうあるか
観察と洞察を繰り返す。そうやって
意識で捉えられるあらゆるものの”底”を探っているうちに、その”底”が抜けた。


実際には、意図してアプローチを変えたわけではなく、生きづらい社会でどう適応(生存)するか
工夫していた中での予期せぬ体験だった。


先人であるけむりんは「自分の心に嘘をつかないことが肝要」と語っていた。
不要な感情、望ましくない思考といった枷を自らの心に押し付けていた私は、嘘をつき続けていたのだろう。