歯科医院

 窓からは西日が差している。梅雨が明ける頃には蒸し暑さを感じさせるのだろうけれど、いまはまだずいぶんと穏やかだ。散歩日和。隣の歯科医院の前では子犬が盛んに鳴いている。
 そんな日常のワンシーンは、実際に触れている時にはこれ以上なくリアルに感ぜられ、過ぎ去ってしまえば、はてどんな質感であったかと途端にぼやけてしまう。
 今という接地点はレコード盤のように次から次へと変遷していく。時が止まる日が来ないのなら、一時間後も明日も千年後も、同じように付き合えるかもしれない。