大きな顔の私

 私は顔と頭がかなり大きい。道を歩いているだけでアカの他人に笑われるって経験が毎日のようにある人はそうそういないだろう。誰もが二度見三度見するほどビックフェイスなのである。池袋や高田馬場あたりでそんな人物を見かけたらたぶん私だ。

 そんな私でも昔は彼女がいてちゃっかり高校生の時に童貞を捨てたりしてるんだから人生ってわからない。今振り返るとずいぶん頑張ったなあと感慨深い。

 ただその頃から大学生に至るまでは、自分の頭と顔の大きさが周囲とは違うと気がついていなかった。なぜ初対面の人々が私の目を見ないのか。なぜ余所余所しい態度なのか。なぜ友人達は腫れ物のように私を扱うのか。いつも周囲の人々と私との間に感じる距離感はなんなのだろうか。周囲の私への態度にある違和感の正体、それが頭・顔の大きさにあるとは知らずにのん気に過ごしていた。

 大学生となっても気がつかず、しばらくそれなりの大学生活を過ごし、彼女に振られた後なかなか改善しない生活を送る。あがいてもあがいても日常的に違和感を感じ前進できないジレンマに陥っていたが、何が原因かわからなかった。

 だがその時はきたのだ。ある日路上で見知らぬ通行人に顔・頭の大きさを指摘される。まあ馬鹿にされたのだ。これがきっかけであった。記憶の中に渦巻いていた様々な場面で様々な人々が見せた私への違和感のある態度への疑問、それらが一気に氷解した。「ああ、俺の顔・頭がでかかったのね」ある意味見性した(笑

 人々が見せる私への違和感、今は実にその訳がよくわかる。だが気がつかなかったほうが幸せだったかもしれない。正直、このストレスには耐えられそうにない。