この世界への遺言としての日常

 私達は死に向かって歩いている。どんな安らぎもどんな満足も仮宿にすぎない。終の宿に腰をおろし、死の淵に足をつっこんで只今を振り返ってみると景色が違って見えてくる。

 日常のひとつひとつの行為は、あたかも雪道を走る馬車が残していく轍のように、この世界への遺言として遺されていくのだ。