over the valley

 完璧な世界の運行を前にした時、己の限界は如実に明らかとなる。
だが同時に、客体と対置される主体が抱えざるをえない孤立の不安は解消される。


 不安の谷を越えると大平原が広がる。
そこである者は、なにかを足す必要も、また除く必要もないとし
その場でひたすら座り続けるかもしれない。
またある者は、何をしようとしまいと道から外れること無しとし
力の限り走り回るかもしれない。
さらにあるいは、あるとき前者、あるとき後者になる者もいるかもしれない。


 科学者ならば、正解を追い求めるのでなく、
既に手元にある正解が如何に導出されるか探り当てるのだろう。
芸術家ならば、あらゆるものが持つ正解の気配を、
純化し顕在化することで人々に感銘を与えるのだろう。


 そこで私はどうする。