葡萄

 己の陳腐さとか滑稽さとか矮小さを感ずる。思い込みに囚われ、バイアスの霧中に漂い、翻弄される。
 そういう時は自己嫌悪に陥るのが常であったが、物事を動的に捉えるようになって徐々に変わってきている。「まったく困ったもんだ、じゃあここからどうする」という観点からいくつもの脱出口を探る。
 「すっぱい葡萄」のような気持ちの有り様を感じては、立ち返る。私は何も持っていない空手なのだ。所有していると思い込めば、失うことに失望したり恐れを抱く。一方、動き続けるものであれば、所有の錯覚は薄らぎ未来は希望や可能性となる。
 悲しいことも起こる。嬉しいことも起こる。だがそこに留まり続けることはできない。私の変容とともに記憶の意味合いも変わっていく。
 ただひとりでも、歩み続ける力を。推進力を得、摩擦力を減じていく。