妄想

 先日放映していたhttp://www.tbs.co.jp/DOOR-TO-DOOR/は、幅広い年代から好感する投書がよせられていると解説欄に載っていた。
 特に私の印象に残っているのは、自分が非力だと嘆いて主人公が床に伏せてしまうシーン。脳性まひという抗いがたい難物を前に涙を流し、頭を抱えてしまう。引き裂かれるような内心の苦悶に囚われた彼を、月明かりが穏やかに照らしていた。
 彼のように無自覚なだけで、我々はいつもどこでも見守られている。物理や化学の法則が恣意的に適用されるわけではないのも、そのひとつの表れなのだろう。先が見えず周りが見えず、どんなに必死でこの世の終わりのような心地がしても、世界からはけっして見捨てられてはいない。むしろ見捨てられること自体が不可能なのだ。存在は、視野狭窄の人間がどんなに否定したところで、全力で許されている。
 名もないちっぽけな虫や草の生に、底知れぬ世界の懐を感取し看取に勉める。そしてその名もないちっぽけなという認識の依拠する矮小な私の価値観も、当然のように許されているという事実に胸を射抜かれる。
 世界の隔たりは、私の頭が作りだす妄想であろう。