かけら

 私たちは欠片でできている。
さまざまな人々と行き交い、さまざな場面と向き合っていく中で
ほんの小さな欠片を少しずつ受け取ってゆく
また同時に、同じくらい小さな小さな掛け替えのない欠片を
触れ合ったもののなかに残してゆく。


 欠片の形も色も材質も千差万別。
 触れただけで怪我をしてしまいそうな欠片ばかり
撒き散らすものもあれば、
そのような欠片を受け取ろうとも、角を落とし、磨き上げ
川原の小石のように円な欠片を生み出しゆくものもある。


 かつて与り知らぬものは、見たことのないような欠片をくれる。
かつて身近なものは、私の欠片も携えて、与り知らぬところへ遠ざかってゆく。


 数年来、数十年来久しぶりに再会した、すっかり風貌の変わった旧友に残る昔の面影は
かつて渡した自分の欠片が彼の人生の中で息づいていたことを想起させてくれる。
同じように、再会した旧友も、若くして逝ってしまった人も私の中に息づいているのだ。


 無限から生まれ無限に還ってゆく有限の私たちは、
有限だからこそ欠片を残すことができる。
欠片を受け止め、欠片を残してゆこう。