新宿

 何か思い出があるわけではない。だが大勢の人々が行き交う新宿は独特の感慨をもたらす。誰もを飲み込んで相対化してしまうような迫力がある。ただ歩いているだけで海の中を遊泳しているような流動感がある。有限性に溜息をつくよりも、息を呑むようなありさまに目を細めていたくなる。
 それは満天の星空に包まれた時と似ている。花にもオーケストラにもその相似形を感じる。それぞれで見ても深い奥行きを持ちながら展開される有機的な感触。