フランツ・カフカの「城」

村上春樹は15歳で読んで衝撃を受けたというフランツ・カフカ。「城」の全編に漂う乾いた存在様態を追体験している。仕事によって、私という存在がなんとか許されている。そんな考えに陥っても無理はないかなと感じる。
ひとりひとりの生の充実に寄与するはずの社会システムが、いくらでも代替を可能とする都市の人口と相まって、人間の主人となってしまっている。
疎外とはこういう感触なのかなと噛み締める。


だがそんなシステムを支えているのは紛れもない生身のひとりひとりの人間であるはずだ。「城」の登場人物達も根からの悪人ではないが、私にはどうすることもできずこれしか方法がない、として疎外される関係を受容している。
無知から現状を追認し、留まってしまうのだろう。私も加担しているのだろう。私は疎外を克服できるのだろうか。
胆を据えて、生身の私を大切に生きる。